俳句の会

俳句の会「交譲葉」令和2年5月句会報告

① 開催日時  令和2年5月23日(土)

② 開催場所  通信句会

③ 参加者   宮内・小西・漆野・朝倉・青木・小川・森川・菅原・安居・ 松井の10名

④ 兼 題   「万緑」一切

⑤ 選 句   6点句(1)、5点句(1)、4点句(1)、3点句(2)、2点句(3)、1点句(13)を選句した。

(6点句)

あめんぼの波紋の下に鯉二匹・・・・・・・・・・鷹   嘴


(選評)

どこかの庭園の広い池のほとりに立って水面を見つめている。夏の日差しが池の底まで届いている昼下がり、眠気を催すような景色の中で、あめんぼがすっと動いて波紋が広がった。

静中の一瞬の動を見逃さずに捕らえたところが見事である。鯉はその下で午睡でもしていたのであろう。

(夢  心)

(5点句)

彼の女(ひと)をそっと菖蒲(あやめ)に襲(かさ)ね見る・・・悠閑亭徹心

(選評)

この句の作者の今の状況下で思い出して、詠める彼の女のいることの若々しさ、気持ちの余裕がうらやましい。「かさね」るを、襲の字を使ったことも思い入れがあるように思える。(待糸 史敝)

(4点句)

球根を抱きて安穏蚯蚓かな・・・・・・・・・・・武   美


(選評)

ガーデニングファンの方は、庭に美しく咲いたチューリップやヒヤシンスなどが、今年は特にコロナ禍の嫌な気持ちを癒してくれたことでしょう。全地球規模で突然襲ってきた禍の中で「普通の日」ということが、何とありがたいことなのか改めて感じずにはいられません。

作者はそんな折に球根に纏わりつく蚯蚓に目をやり、庭いじりの中でちょっと手を休めて心をそれに合わせる、とても作者の心根の優しさが

伝わってきました。(菅原 互酬)

(3点句)

万緑の山なみ仰ぎ無人駅・・・・・・・・・・・・・・・小西 小牧

青簾家居楽しむ端緒とし・・・・・・・・・・・・・・・・・小西 小牧

(2点句)

どの子にもしろつめくさの花冠・・・・・・・・・・・・・・武   美

夏山の行き交う峰の山かつら・・・・・・・・・・・・・・・菅原 互酬

新緑の都大路に山車はなし・・・・・・・・・・・・・・・・待糸 史敝

(1点句)

飲んでねと茶園(さえん)の友の新茶くる・・・・・・・・・小西 小牧

母の日のすっかり日焼けのアルバム哉・・・・・・・・・・・漆野 達磨

人類を守らんとするマスクかな・・・・・・・・・・・・・・漆野 達磨

万緑の木陰あふるる若き夢・・・・・・・・・・・・・・・・青木 艸寛

別々に父も涙す母の日や・・・・・・・・・・・・・・・・・青木 艸寛

さわさわと風吹き渡る春深し・・・・・・・・・・・・・・・鴇  香子

万緑や規制解除の鐘響く・・・・・・・・・・・・・・・・・武   美

万緑の中におおたか籠るらし・・・・・・・・・・・・・・・夢   心  心

爽やかな万緑香り風が追い・・・・・・・・・・・・・・・・菅原 互酬

雛の背に万緑の風そよぎけり・・・・・・・・・・・・・・・鷹   嘴

初夏や“デカメロン”読む草の上・・・・・・・・・・・・・鷹   嘴

万緑に白き馬居り湖際(みずべ)かな・・・・・・・・・・待糸 史敝

夏みかん酸味漂う室の中・・・・・・・・・・・・・・・・・待糸 史敝

(投 句)
万緑の輪廻よ永遠(とわ)に続けかし・・・・・・・・・・・悠閑亭徹心

万緑の人外魔境怪鳥(けちょう)鳴く・・・・・・・・・・・悠閑亭徹心

万緑の中に射し込む陽の光 ・・・・・・・・・・・・・・・漆野 達磨磨

万緑の木々に囲まれ時を待つ ・・・・・・・・・・・・・・鴇  香子

新緑の公園ぶらりコロナ禍に・・・・・・・・・・・・・・・鴇  香子

春愁や愛の便りは別離なり・・・・・・・・・・・・・・・・青木 艸寛寛

何として立ち枯れたるや夏椿・・・・・・・・・・・・・・・夢   心

木下陰蝦根ひっそり咲きにけり・・・・・・・・・・・・・・夢   心

糸遊のクラクション鳴らしすれ違う・・・・・・・・・・・・菅原 互酬

⑥ 句会後記 悠閑亭徹心(宮内)

「ゆずりは」結社満8年を迎えて

この5月句会で「ゆずりは」は8年を閲した。9年若前、漆野世話役と俳句同好会の運営をどうするかあれやこれやと討議した事を想い出し、うたた感慨深い。その間、退会者は2,3あったが(2名が物故―合掌)、概ね出句者は8~9名程で約2,300句強がつむぎ出され、第7句集迄刊行された。継続の力に感嘆する。拙は殊更時下の家籠り中、通信句会ではあるが、作句と投句(句意の解説)・全員の投句から3句を選句(選評)・句会結果報告を受領するという句会の全プロセスを大いなる楽しみにしている。

顔合わせの上、句評、アドバイス、時には蘊蓄を語り合う、より大きな楽しみのあるリアル句会の開催が待ち遠しい。

(以  上)