会員からの情報

ウィーン楽友協会大ホールでの演奏会を終えて

1月5日、無事に演奏会を終えて、9日に帰国いたしました。

今回のコンサートは、黒坂黒太郎氏が率いるコカリナグループと、我が早稲田大学OB合唱団とのコラボレーションでした。

御存知の通り、オカリナは東欧のあたりを発祥とする陶器の素朴な楽器ですが、黒坂氏は木を削って笛にし、これをコカリナと称しました。音階に応じて数種類のサイズがあります。

オカリナは、宗次郎の演奏でおなじみですが、彼の演奏ではこの楽器が合奏に適しているとは思えませんでしたが、コカリナでは見事な合奏になり、私も驚きました。

黒坂氏はコカリナを作る工房を持ち、これを教える教室を全国に展開しております。

今回全国の教室から、100人を超える生徒たちが集まりました。技量により、3グループに分かれ、演奏曲目により編成が変ります。

合唱団は、70人ほどの団員がおりますが、今回の参加者は21名で、ホールの大きさに対してやや迫力に欠けました。

“黄金の間”と言われる大ホールは、ウィーンフィルのニューイアーコンサートの放送でおなじみですが、テレビの画面から感じていたよりも奥行きがとても短く感じられました。1、744の座席と、立ち見を入れると2,000人も入るホールとは思えないほどです。

ステージは想像よりは雑な感じの板張り、客席のフロアーも板張り。椅子は、壁沿いのボックス席はフェルトの背もたれですが、6+10+6のフロアー席は板の背もたれという質素なものです。天井は見事な天井画です。

照明は、シャンデリアのみ。演奏中は、客席のシャンデリアは減光されますが日本のホールほどは暗くならず、ステージからお客様の表情がハッキリ分かります。

さすがに音響はとてつもなく素晴らしいものでした。シューボックス型のホールは音響が良いと言う評判は知っておりましたが、想像以上でした。かって聞いた事のある数多いホールでも、これ以上のものを私は知りません。それでいながら個々の音源はしっかりと通り、客席にいた家内の耳に私の声がハッキリと聞こえたそうです。

入場料は7ユーロでした。2006年にウィーンのオペラ座で“トリスタンとイゾルデ”を観た時の料金が9ユーロでしたから、アマチュアのコンサートとしては格別に安いというわけでは無いと思います。それにもかかわらず1階は満席、2階は両サイドのボックス席に3割ほど空席があるのみ、3階席にもお客様がおりました。

コーラスの出番は、日本民謡3曲、“よさこい、金毘羅船船、木曾節”、モーツァルト作曲でラテン語の歌詞の“アヴェベルヌ コルプス”、“一本の木”、とアンコールの“ウィーン我が街”の6曲です。

本番では脚が震えるのではないかと心配しておりましたが、3時間近いリハーサルで落ち着くことができました。

 

 

 

 

 

リハーサル風景

4日に日本を発ち、12時間を超えるフライトと8時間の時差で、余り良いコンディションでは有りませんでしたが、思いっきり歌うことができました。

コーラスに参加して未だ13ヶ月しか経っておらず、コンサートホールのステージに立つのももちろん初めてです。私にとって晴れの初舞台が、いきなり楽友協会大ホールの檜舞台というドラマティックなことになりました。

ウィーンの聴衆は、聞き上手というか乗せ上手というか、とても熱心で暖かく、アンコールの後はスタンディングオベーションまでいただき、思わず涙がこぼれそうになりました。

小雪のちらつく中、お土産として私たちが機内で折った折り紙の鶴を大事に持ちながら帰っていただきました。

ザルツブルクでは、6日に観光客でにぎやかなモーツァルトの生家前の広場で、7日に大聖堂の祭壇前でアヴェヴェルヌ コルプスを歌いました。特に大聖堂では、宗教に関心の薄い私でも神秘的な雰囲気に感動いたしました。歌の後、神父さんの歓迎とお礼のご挨拶も素晴らしいものでした。

これからもコーラスの一員として努力を続け、次の機会には更に充実した成果を発揮したいと思います。

 63年 理工卒 佐々木 辰男