12月2日 特別講演会「死にどう向き合うか」
趣旨説明
―デス・カフェ(自由懇談)に参加し、自分の思いを他者に伝えよう―
水野治太郎
NPO法人とうかつ・生と死を考える会理事長
麗澤大学名誉教授
超高齢社会の到来に伴って、高齢者が人生の終末期に備えるために何を準備したらよいのであろうか。終末期に関する希望を伝えるエンディング・ノートが流行しているが、それですべてが尽きるように考える人々が大勢おられる。肝心の「自己の死」「大切な人の死」について向き合うことを避けているようにみえる。
生と死の問題は、決して1冊のノートで終わってしまうものではない。またお墓や葬儀方法の希望を伝えて済む問題ではない。
死は人生の単なる終わりではない。何かの始まりであるかも知れない。死は決して無になることではない。後に残る遺族にとっては、生きている時以上に、負担になる場合もあり、気遣いを求められることもある。
死は人生の完成を意味する。完成とは、最後に越えるべき人生の頂きであるという意味である。その人生の頂を前にして、人は自分の生をどう意味づけ、価値を見出したらよいかを問われている。
死は周囲の人々に悲嘆や失望感を与えたり、挫折感や空虚感をもたらすものである。いろいろな死に方が、いろいろ複雑な感情を導くものである。
死をめぐる多次元の思いを、言葉にして他者に語ることを躊躇しないで、あえて言葉にして他者に伝えてもらいたいものである。生きるとは、他者に自分の思いを伝えること、他者の思いを誠実に傾聴することに尽きるのではないか。
デス・カフェ(小グループでの自由懇談)は、欧米で始まった庶民感覚の生と死をめぐる運動である。哲学者や宗教家が生と死に関する正解を与える時代ではない。我々一人ひとりが、自分の長い人生をみつめ、生きること・死ぬことの意味を日々の暮らしの中から言葉として紡ぎ出す人間的活動である。どうぞ生と死をめぐるデス・カフェ
に関心を持っていただき、参加いただきたい。