「えっ、5人なの」、午後3時、松戸駅に集まった参加各位が、お互いに顔を見合わせて笑いだした。「でも、いいじゃない、のんびりと気が楽よ」。面々は、山本(正)さん、石橋さん、秋田谷さん、幾島さん、榎本の5人。「これ、最少参加者数の新記録ね」。
そうです、幾つかの要因が重ならないとこんな新記録は生まれません。その要因とは、我が流山稲門会員参加の行事が重なり、散策会も当初予定の6月5日が囲碁同好会参加の首都圏囲碁大会とぶつかったため1週間ずらした今日12日は、近隣3つの稲門会総会への役員諸兄の出席と、流山稲門会有志協力の「ジョー・オダネル写真展」とイベントが生涯学習センターで開催中のため、女性会員を含め、散策会参加常連の皆さんが不参加となったからです。これは流山稲門会の活発な活動を物語るもので、今後はスケジュールの調整、変更は、実のある情報交換をもとに考えることにして、今回のケースは明るく前向きに受け止めましょう、と真夏を思わせる日差しの中をスタート。
駅西口のメインストリートを市民劇場まで歩き、左折すると親鸞開祖の浄土真宗西蓮寺と弘法大師空海を開祖とする真言宗豊山派の善照寺、宝光院が隣同士といった感じで建っている。空海にとって出生と修行僧としての旅で縁の深い四国は、八十八ケ所の本家本元。その八十八の寺院名と大日如来、釈迦如来、薬師如来など、その寺の本尊名を刻んだ新しい石がずらりと並んでいるが、これはごく最近作ったものらしい。
3分程で江戸時代松戸の鎮守であった松戸神社へ。日本武尊が吉備武彦と待ち合わせたことから、待つ処、待土で松戸になったとか。境内には秋葉神社、厳島神社、八坂神社など10の神社が祀られている。
梅雨入り間近の晴れ上がった6月の西日は、眩しくても吹く風が心地よい。5人の一行はそれぞれの話題を楽しみながら、グループというよりも気の合った仲間といった感じ。境内で、お宮参りで訪れた家族のカメラのシャッターを親切に押してやった幾島さんは、松戸神社の裏を回っていた4人より先に次の戸定が丘歴史公園に向った。「幾島さん待って」と追いかけて常磐線のガード下をくぐる。右折すると200m余りの上り坂で、突き当りが歴史公園の入り口。
ところで念のためにと思って聞いてみると、この戸定が丘歴史公園、初めての人はおらず5人全員リピーターとのこと、大体のことは皆さんご存じです。
まずは戸定邸。徳川慶喜の弟にあたる最後の水戸藩主徳川昭武の別邸で、歴史館と共通入館料240円払って、奥への廊下を辿ると、庭園に面した二の間、客間、中の間、書斎の襖をはずした広い部屋が現れる。明治前期の上流住宅の風情を伝え、国指定重要文化財も納得。明るい日差しが差し込む広い畳の上に涼しい風を受けて寝転んでいる入館者が居て、いかにも気持ちよさそう。関東の富士見百景に選ばれている部屋からの眺めは、庭園の緑の間に都内のビル群を望むことが出来るが、今日は霞んでいるため富士山は見えない。その代わり、東京スカイツリーはどの方角かと、山本さん、幾島さんで確かめ合うが庭園の緑に遮られ、これまた見えない。
次は戸定歴史館。昨年10月、天皇皇后両陛下が行幸啓になり、千葉大学園芸学部創立百周年記念展示会「江戸時代の園芸文化史」を鑑賞されたとのこと。ここには松戸徳川家伝来品や、パリ万博を巡る国際交流の様子や写真などが展示されている。石橋さんが水戸徳川家の家系図に気付き、秋田谷さん、山本さん、幾島さんも集まって系図をたどる。「なんだ、慶喜は昭武の兄というが異母兄ではないか」、「当時は徳川家なんか異母兄弟なんてざらなんだ」、「そう言えばそうだ」。
6月が作り出す最高の緑に覆われた公園に出る。落ち着いた風情のある庭の感じで、木々の向こうは千葉大学園芸学部の校舎。散策に打ってつけの日よりと思うが、人影はまばら。
午後4時15分頃、戸定が丘歴史公園を後に松戸駅に向うが、折角来たのだから又坂道はちょっときついが予定通り途中の松戸中央公園に寄りましょう、と上り坂にかかる。これが谷間を巡る曲がりくねった坂といった感じで、石橋さん、幾島さんがトップグループ、山本さん、秋田谷さんがゆっくり後方からのぼり、公園の表門へ。ここは昭和20年まで陸軍兵学校があったところで、入り口の門柱と番小屋がその名残をとどめている。木々の緑は多いがいかにも市内の公園といった感じで、道の向いは千葉地方法務局や地方裁判所、地方検察庁。「俺はこの法務局に来たことがあるよ」と山本さん。隣接した聖徳大学が木々の間に見える。ここから松戸駅は近い。
本日のコースはこれで完了。イト―ヨーカドーの5階からエスカレーターで店内を通り、反省会全員参加の松戸駅東口「庄や」へ。時刻は午後4時50分。
今回は散策、見学もさることながら小人数の行動だったお陰で、勝手な話題を一緒に楽しむことができた。反省会は飲みながらまさに談論風発。近況を語り持論を披歴、政治、経済、スポーツ、健康問題、買い物、食い物、孫の話と活発なおしゃべりが飛び交い、1時間半余の時はあっという間に過ぎた感じ。小人数での散策会もそれなりに楽しめて面白い。
榎 本 右 (1960年 法学部卒)