2014年 02月 06日
駅シネマ同好会で『小さいおうち』を観ました
~嶋沢伶衣子(1981年独文卒)~
*1月27日(月)、駅シネマ同好会の「第31回映画鑑賞会」で、山田洋次監督の82本目となる最新作『小さいおうち』(原作 中島京子)を観ました。
「小さいおうちパンフレット」
*映画の舞台の「小さいおうち」は昭和モダニズムが再現されていて、私は お洒落で上品な和洋折衷の世界に惹きこまれました。赤い屋根/洋風ポーチ/ステンドグラス/応接セット/蓄音機等々、モダンで印象的でした。本や玩具など随所に使われた小道具もレトロな情緒を漂わせていて、役者さん達も当時の雰囲気を醸し出していました。
「劇中小道具(絵本等)」
「劇中小道具(玩具等)」
◎『小さいおうち』映画版あらすじ(さわりだけ)
*平成に生きる健史(妻夫木聡)は、生涯独身を通した大伯母タキ(倍賞千恵子)が大学ノートにしたためている”自叙伝”を読むのを楽しみにしていた。
*昭和11年、若かったタキ(黒木華)は山形から女中奉公をしに上京して、小説家の小中先生(橋爪功)に一年仕え、その後平井家に奉公する事となった。赤い屋根のその家には、玩具会社常務の雅樹(片岡孝太郎)と若奥様の時子(松たか子)と恭一坊ちゃんが暮らしていた。お洒落で綺麗な時子に、タキは憧れの気持ちを抱く。
*ある日、雅樹の会社の社長と社員たちが平井家に集まり、日中戦争や金儲けの話で盛り上がった。デザイン部の板倉(吉岡秀隆)だけは彼らの輪に溶け込めず、子ども部屋に行って恭一坊ちゃんと一緒にうたた寝してしまう。皆が帰ってから目覚めた板倉は時子と音楽や映画の話などで意気投合し、やがて二人は逢瀬を重ねるようになる…戦争の影が忍び寄る中、小さな家に閉じ込めた「秘密」が、タキの目線で書き綴られていった…
◎『小さいおうち』映画版感想
(この映画の感想をネタバレ無しで書くのは難しいです。これから観る予定の方もいらっしゃるでしょうから気をつけますが、多少のネタバレはお許し下さい。)
序盤、雪深い山形の寒村からタキが上京した時点で、地方から出てきた頃の自分を思い出して目頭が熱くなりました。大都会東京の赤い屋根のモダンなお家で仕えた日々は、タキちゃんの人生で一番輝いて充実していた時期だったのかもしれません。
平井家に骨を埋める位の覚悟で奉公したタキは、奥様の秘め事を誰にも話せず一人苦しみます。大好きな奥様や大切な家族が壊れないよう、幸せの象徴の「小さいおうち」が無くならないよう、必死で守ろうとします。けなげでひたむきなタキちゃんに、胸を打たれました。
タキは”自分がしてしまった事”への後悔の念を最晩年まで持ち続け、あぁ、私は長く生き過ぎてしまった、と嘆いて堰を切ったように号泣しました。「そんなに苦しまなくていいのに」という言葉は、先に逝った時子たちの想いも伝えているようでした…
『小さいおうち』を観終わって、駅シネマの会の皆さまと 思った事を語り合いました:
この作品は、観る人によって解釈や感想が違ってくるのでは?と、私は思いました。登場人物の誰に感情移入したか、俳優陣は適材適所か、山田監督の作品が好きか、原作を既読か未読か、男性/女性、既婚/未婚、年齢層などによってかなり違ってくると思いました。
駅シネマ同好会の皆さま、これからもどうぞ宜しくお願いします。 m(,_,)m
(完)