散策会

(第29回散策会)「初秋の小江戸(川越)散策記」

平成18年10月1日日曜日、曇り。集合場所川越駅JR改札口に近いショッピングセンター「ルミネ」前に午前10時、顔を揃えた参加者は、敬称略で列記させていただくと秋田谷、幾島、石橋、牛島、漆野、工藤、小沼、小山、菅原、塙、山本(正)、榎本の12名。

紅一点菅原さんの参加は嬉しい限りだが、菅原さんのためにも他に、紅二、三点お顔を拝見したかったなあ、と思いつつ、駅を後に出発進行。さて、この小江戸と呼ばれた川越の街は、大きな通りが大まかに言って東西南北に伸びているため地図と照合しやすい。市の南部に当たる川越駅は新興のエリアにあり、江戸時代からの古い街は今の地図で言えば北に位置していたことが分かる。

人通りは少ないが車が結構走る市街地の通りを東にすすむこと約15分で、喜多院入り口の案内板に気付く。ここを左折すると道は北に向かう。通りの左手に小学校と寺院の山門が現れ、右手に高等学校の校庭を望むことの出来るこの道は緑の木立も多く、落ち着きがあり散策には向いている。

やがて、第一の目的地喜多院が左手に。塙先輩より参加各位にと渡された「小江戸川越案内MAP」によると、この喜多院は平安時代の創建とされ、徳川家康の信任が厚かった27世の僧天海や、江戸城の家光、春日局ゆかりの部屋の移築で有名であるとのこと。参拝の後、雄大な喜多院を背景に一同記念写真を撮る。

広い境内に続く駐車場を右手に見て、次のスポット川越城本丸御殿への道を辿るが、途中の要所に立っている道しるべに注意しないと間違いやすい。喜多院から歩くこと15分程で民家の間のやや勾配のある道が開けて広場となり、ひさし付きの重厚な玄関を持つ川越城本丸御殿の前に出た。

本丸御殿、市立博物館、蔵造り資料館共通の入館料300円支払って、威風堂々たる武士の心がつたわってくる御殿に入る。廊下がぐるりと部屋を取り囲む造りになっているが思いのほか質素な佇まい。この川越城は室町時代築城のプロとして知られた太田道真、道灌が築き、江戸時代松平信綱の入城により本格的城郭として整えられたそうである。天守閣がない平城でお城のイメージからは物足りないが、江戸幕府との関わりにおいて政治上、軍事上重要な意味を持っていたらしい。このエリアは現在では市の北東に当たる。近くに初雁(はつかり)の名前をつけた野球場や公園があるが、さらに北東に広がる田園地帯に点在する沼沢に晩秋初冬訪れる雁に因んだ名称だとしたら、この辺りまで昔は雁が北から訪れていたのであろう。今、川越周辺で雁を見ることはできない。歩いて1分程のところに市立博物館がある。館内約30分の見学となったが、あらためて感心したのは観光に対する川越市の力の入れ方。時間の都合でカットした市立美術館と並んで建つ市立博物館は、蔵をイメージさせる日本瓦葺の切妻屋根と漆喰白壁の商家風仕立て。展示は川越の歴史文化を辿る内容であるが、感心のポイントは解説に専門職員を配していること。巧みに語る解説員の話に展示の意味合いが端的に理解できる。極当たり前であるが運営する当局の観光に対する姿勢で現場の実態は大いに異なってくる。名前は聞かなかったが解説員の名調子に聞き惚れてしまった。川越は新河岸川によって浅草まで繋がっていたので、底が浅い「川越ひらた船」で江戸との物流が盛んだったため物と共に文化も運ばれ小江戸と呼ばれるようになったといった解説はこの街のプライドを思わせる。川越の市制施行は埼玉県で最古大正11年とのこと。

12時近くになった。市役所前を経由して予約してある昼食の店に向かう。観光の中心エリア「蔵の町並み」通りに程近い料理店「さヽ川」が本日の食事処。一同やれやれといったところで、案内された2階の一室でテーブルを前に足を伸ばす。メニューはこの店お勧めの「小江戸御膳」。ビールはご希望の方だけ、ということでいつもの反省会と違って若干盛り上がりにかけるが、朝からのスケジュールをこなした後の落ち着いた時間を、お互いに楽しむことが出来たのではないかと思う。

1時間の休息のあと、「蔵の町並み」通りに出る。秋の観光シーズン幕開けの日曜日とあって、散策の観光客と車が両側に並ぶ重厚な蔵造りの商家の間にひしめいているといった感じ。この通りから横に入ると環境省の「かおり風景百選」に選ばれた菓子屋横町が現れた。焼き団子やハッカ飴のかおりと佇まいで古き良き昔を思い起こさせる横町に若いカップルや子供連れの人たちが多い。今の人は「ALWAYS三丁目の夕日」の1シーンを重ね合わせて懐かしさを楽しむのかもしれない。考えてみるとこのような風景は日本の街であまりお目に掛かれなくなってしまったようだ。

再び蔵造りの町並み通りに出て共通券使用最後の「蔵造り資料館」へ。ここは蔵造りの家の内部と敷地が見られるというのがミソであるが二階へ上がる急な階段の狭さにはびっくり。

通りの反対側、やや奥に聳え立つ木造の鐘楼がまさに川越のシンボル「時の鐘」で、今でも一日に4回鳴る鐘の音は400年以上前と変わらないという。ここも環境省の「残したい日本の音風景百選」に選ばれている。散策、観光の人の流れをぬって客を乗せた人力車が過ぎて行く、まさに観光地小江戸だ。

心配していた空の具合が一層怪しくなったが、わが散策会はスケジュールの大半をこなし、最終到着地川越駅に向かって大正浪漫夢通りからクレモナ通りへと続く川越最大の商店街を南下する。雨が僅かに落ちてきた。旧川越藩御用達和菓子の亀屋で買い物をしていたグループと川越駅に先行して待っていたグループが合流したのが予定の午後3時。

「いやー結構歩きましたね、お疲れ様でした」

 

参加一行12人、全員集合した川越駅JR改札口前で解散となる。

榎本 右 (1960年 法学部卒)