散策会

第78回 暮れの上野界隈

 

時の経つのは早いもので一昨日に師走に入った。そして昨日、本年の納めとなる忘年散策会が行われた。行き先は上野周辺地区である。今回の散策目的の主たるテーマは①文化芸術に触れる②伝統的な日本の美味な食文化を味わう③日々変わりゆく東京の都市景観に接するという趣向を凝らした企画で幹事さんの素晴らしい着想に基づくユニークなものとなった。しかも歩く距離は程よいもので疲労を感じることもないものであった。
JR柏駅に集合時刻の9:50に参加者全員18名が参集し10時前発の電車に乗り上野駅公園口に10:25到着。改札を出ると通常時よりも多い人出である。ご承知の如く上野公園一帯には複数の博物館、美術館や動物園、寺社仏閣があり都内有数の行楽地であり、この日は好天に恵まれたことと折からの紅葉も加わり東京文化会館前から動物園方向に向かう道路は沢山の老若男女で溢れていた。われわれ一行は直ぐ右手にある国立西洋美術館入口に行く。本年夏、ル・コルビジェが設計した17の建造物が創造性と斬新な景観に富む近代建築と都市計画に値するものとして世界文化遺産に指定された。国立西洋美術館はこのうちの一つで本邦唯一のものでもあり駅周辺には世界遺産になった祝いの小旗も多く掲げられていた。

巨匠コルビジェには3人の日本人の弟子がいるが、その一人に吉阪隆正がいる。彼は小生の早稲田在学時に理工学部建築学科の有名教授で、モダニズムの建築デザインによる日本建築界のリーダーの一人であった。吉阪教授の活動範囲は多岐に亘り冒険家、登山家でもあり早稲田隊を率いてアラスカのマッキンリー遠征を行った方である。という訳で西洋美術館は早稲田との繋がりもある。この建物は階上への誘導にスロープを、明かり採りに自然光を取り入れる天窓を採用するなど昭和34年の竣工当時評判のデザインだった。

常設の収蔵美術品は近代西洋絵画と彫刻から成る旧松方コレクションを主体とし、近代絵画の発端となった具象的手法による宗教画、モネ、ゴッホ、ルノアールなどの印象派・後期印象派の作品、現代アートに繋がるキュビスムやフォービスムのピカソ、ドラン、ルオーなどの作品、ロダンの彫刻作品等々が余裕のある空間に展示されていて他の国内美術館も含めた入館者で混み合う企画展と違いゆっくりと鑑賞できる。更に有難いことには65歳以上のシニア料金は無料だった。私は東京都美術館は第3水曜日に限りシニアは無料で入館できることは知っていたが、西洋美術館は常設展については常時シニアについて無料になるとは知らなかったので今後大いに利用したい。約50分の各自フリー鑑賞の後,館外に出てロダンの「考える人」像の前に一同集まり記念写真を撮る。雲一つない青空と太陽に明るく照らされて黄金色に輝く黄葉の大きな銀杏の樹をバックに顔を揃えての写真撮影となった。

この後は上野東照宮の境内脇にある江戸中期創業の江戸前うなぎの老舗・伊豆栄梅川亭での昼食となる。二階の座敷に通されてテーブルに腰を落ち着け、中川さんの発声による乾杯、そして2番目のテーマである伝統和食の代表とも言えるうな重を味わう。

少し濃い目のたれの味付けで美味しく食も進んだ。お腹を満たした次は今回の最後の訪れ場所となる2K540へと桜開花時は花見客で埋まる桜並木の公園内メイン道路を歩み、西郷像下からは中央通りに出て日本橋方向に向かう。途中、上野広小路を過ぎて間もなくの旧上野黒門町に店を構えるどら焼きなど和菓子で有名な老舗の「うさぎや」に立ち寄り、希望者はお土産を購入した。この後、近くの信号場所で中央通りを横断し山手線のガード脇に出てガードに沿って秋葉原方面に歩を進める。程なくして2K540に着いた。
2K540とは正式名称が「2K540 AKI-OKA ARTISAN」という。秋葉原と御徒町の間の山手線・京浜東北線の高架下に設けられたJR東日本都市開発が運営する商業施設で、工房を兼ねたショップ、ギャラリー、アトリエ、カフェ等約50店舗がある。この付近が東京駅から2,540メートル離れた距離にあるのでこの数字が冠されている。ガード下は従来倉庫や駐車場として使われていたが、美観上劣り街の賑わいにも寄与しないことより一新して集客できるスポットに生まれ変わらした。
この街づくりのコンセプトは商品をただ販売するだけでなく、「ものづくり」を実見したり、体験もできる職人的なクリエーターによる店舗を出店させて特色のある地域にするということである。
よって、ここには瀟洒な店構えの店舗が宝飾品、アクセサリー、皮革製品、ガラス器、メガネ枠などを扱う。2010年10月に開業し2011年中にはほぼ現在の姿になり、今では人気スポットともなり訪れる人も多くなっている由である。各自興味のある店舗を覗くことにし、ここで本日の散策会は解散した。
今回の忘年散策会は小春日和のような暑くも寒くもない天気の下、心地よく散策し一級芸術作品の鑑賞、美味な食事の摂食、特色ある製品のウィンドウショッピングを愉しみ満足して帰宅した。行程をアレンジして下さった漆野さんに感謝して擱筆する。

奥野 靖三(1959年 政経卒)